サントーシャ「足るを知る」

サントーシャ「足るを知る」

ヨガの哲学に「サントーシャ」というのがあります。

日本語にすると「知足」「足るを知る」に近い教えです。

何かを獲得したり、成し得るということに目が行きがちですが、

足るを知る時とは、

時間をかけて培って来たものが確固としてあるんだなとわかる時

なのだと思いました。

手に取れない形のないものかもしれないけど、

気づけた時、心の奥底からの感動を覚えます。

困った時、解決しなきゃいけないと思う問題が起きた時こそ、

そうした視点に立てるかどうかに大きく左右されるなっと改めて実感することがありました。

どうしたら出来るかなを考える

毎月第4日曜日に開催している大通でのハンディキャップヨガは、サポーターさんがたくさんいます。

ほぼマンツーマンで参加者さんの安全を見守り必要なお手伝いをしているのですが、今月は時季的にイベントやお子さんの行事が重なり2名のみでした。

マンツーマンまでいかなくてももう少し来れる人がいないと大変かも、、、いつもと同じようにできないかもと不安が一瞬よぎりました。

こういう時こそ、どうしたら出来るかなを考えるよい機会でもありますので、サポートの手が足りなくても大丈夫なように内容を考えました。

車椅子ユーザーや麻痺系の方が多いクラスですので、身体の動きを少しでも安全にガイドするにはとあれこれシミュレーションして、臨んだ当日でした。

1つひとつゆっくりとお伝えしながらのウォーミングアップでは、ペアワークを入れてました。

いつもはサポーターとやることを同行の親御さんやヘルパーさんたちとやってもらえばいいのだ、と思った時ハッとしました。

サポーターがいなければできない、あるいは難しい、、、と思い込んでいたのです。

動ける方には動いてもらおう。親御さんやヘルパーさんに移動してもらい、いつもの付き添いではない方たちとペアにもなってもらいました。

ほとんどがリピーターさんのクラスですが、「実は今まであまり話したことなかったね」、とか「初めまして」と挨拶や会話が弾みました。

ペアを変えることで、身体の使い方がちょっとずつ違ってくることや、お互いを知るいいきっかけにもなりました。

 

すでにあった

十分に身体が温まったところで、うつ伏せのポーズの練習に入りました。

ポイントをお伝えしながら段階的に練習をしていた時、何人かがまだ説明していないポーズへ自然と移行していました。

私の考えるシークエンスは、今練習していることが必ず次につながるようにしていますので、最終的にできたらその前の3,4つの動きを繋げてそのポーズに行けたらいいな、と思っていました。

”サポーターがいなければ難しい”に囚われていたことをまたもや気づかされました。

お1人を除いて全員が何年も通ってくださっている参加者さんたちでした。

月に一度とはいえ、身体の使い方のコツを繰り返し練習してきて、身体もものすごく変化してきています。

積み上げてきたものは、すでに彼らの中にしっかりと浸透していたのです。

安全のためですが、指示を待ち、サポーターさんの声かけとお手伝いがあってからやるのではなく、ご自身の身体との対話をしっかりされて自然に動く方に行けたのです。

 

今あるところから、今あるものから

足るを知るとは、あるもの、もっているものが生きる・活かせた!という実感があった時に気づくことなのだと思いました。

障がいのある方たちとの関わりでは、どうしたら出来るかなを考える中で、できないこと、ないものをどのように補っていこうかという視点が大きくなりがちです。

それはそれで必要であり、要にもなってくることですが、今できることを本当に観ていたかを今一度自分に問うきっかけになりました。

サポーターの数を満たすことではなく、それぞれの身体の状態、心の準備ができたところで参加者さんたちの中から生み出される力を信じることが最大のサポートなのだと。

集団や場の力もあります。

誰かができた!をみんなで賞賛し合い、励みにし、自分もやってみようとトライする姿もありました。

ポーズの完成はそれぞれ違うものです。どこをどう力を入れると動きやすいかなどをご自身で探究して、最大限の力を発揮することができたみなさんは、とてもよい表情をされていました。

 

余談ですが、人数が少なくてどうだったかな?と2名のサポーターさんに尋ねたところ、

「全然大変じゃなかった」「いつもより楽に感じるくらいでした」と返ってきました。

あり方、捉え方

手取り足取り自分の行きたいところに参加者さんを引っ張っていくことを目的とはしていません。

ヨガの練習を通して、それぞれが感じるものをしっかりと自分のものにされるかどうかが重要だと思っています。

いろいろ案を練ったクラスには、「これができたらいいな」はもちろあります。

その根底になるのが、参加者さんたちの中にあるものに目を向け、今できることを信じてガイドするという指導者のあり方、軸と言ってもいいかもしれません

「障がいのある人にヨガを生かす基礎講座」は、このあり方に焦点を当てています。

指導者として私たち自身の中にあるものに目を向けていくことでもあります。

 

自分を知ることから目の前の方を信じてヨガを生かす軸を作ることは、障がいの有無に関わらずどなたを対象としても安心して指導できる土台となります。

 

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